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出展作家

山本篤

山本篤

© Atsushi Yamamoto, courtesy ShugoArts

尊厳について

2024
Video
8 min., 4 sec.

老人の面を付けた男が、可動式ベッドを背負いながら人気のない山を登る。老いた姿と若い姿を同時に持つ男は、人間の一生を感じさせる。重そうに運ばれるベッドは、一生をかけて積み重ねた尊厳を象徴するようでもあるが、多くの人が最期の時を過ごすただの物質でもある。人間は身ひとつで生まれ、人生を重ねるうちに、大切な記憶や人、心の拠り所となるものを抱えていく。やがて年老い、ひとつの寝具を背に最期を迎える。生前、山本の祖父が入院から一時帰宅した際、片付けられた自宅を見て「みんな捨てられてしまった」とつぶやいたという。本作には、人間の存在や価値は当人の身体だけではなく、共に大事な時を過ごした物や人にも宿るのではないか、という山本の考えが反映されている。

山本篤

1980年東京都生まれ。多摩美術大学絵画学科卒業。2003年にベルリンへ渡り、映像制作を始める。18年には文化庁新進芸術家海外研修でベトナム・フエに滞在。平日は会社員として働き、休日に撮影するスタイルを貫き、300本以上の作品を制作してきた。生きることの意味と無意味さを問う、社会派のフィクションから私的なドキュメンタリー、コント的な実験映像など多彩な作品を発表している。近年の主な個展に「シュウゴアーツ オンラインショー 映像小屋3-残光」シュウゴアーツオンライン(2025年)、「MY HOME IS NOT YOUR HOME」シュウゴアーツ(2022年)、「MAMスクリーン07:山本 篤」森美術館(2017–18年)など。また参加展に「寄る辺ない情念」八番館(2024 年、神奈川 *黄金町バザール2024内企画)、「DOMANI・明日展」国立新美術館(2021年)などがある。