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November 4, 2021

【ART WEEK TOKYO】 アートバスに乗って東京の現代アートを体験
日本初のアートイベントをアンバサダーが一足先に体験 — 廣松叶子



秋も深まりアートを楽しむ季節がやってきました。

 11月4(木)から11月7(日)まで開催されるART WEEK TOKYO(アートウィーク東京)は一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォーム主催で、都内の6つの美術館と44のギャラリーが協力したことによって楽しめる大規模なアートイベント。

 今回は現代アートが大好きなCREAアンバサダーの廣松叶子さんが一足先にイベントを体験。その様子をお届けします。

アートウィーク東京とは?
 アートウィークとはベルリンやロンドンや北京など世界の都市で毎年開催されている国際的なアートのイベント期間の総称。その都市の「いま」のアートシーンがわかる大規模イベントで、各国のアーティストの作品やギャラリーや美術館などのアートコミュニティを国内外へ発信していくことが目的で開催されています。

 東京はアジアでも有数の大都市ですが、都市の規模が大きく美術館やギャラリーが点在していた事が原因で、アートウィークの開催が難航していました。今回は都内のアートコミュニティが協力することによってアートウィーク東京が開催された記念すべき第1回となります。

アートが体験できるアートバスで繋がる東京各所の美術館とギャラリー
 アートウィーク東京では美術館とギャラリーを結ぶ4つのルートを巡回する「アートバス」に乗りアートツアーを楽しむことができます。アートバスの中ではルートごとにそれぞれ異なる4組のアーティストによる4つの作品が。移動時間にもアートを楽しむことができ、アート好きにはたまりません。

 今回、私が乗車したのは塩見允枝子の作品が体験できるアートバス(期間中はCルートを運行するバス車内で体験できます)。

  塩見允枝子は自然や日常の出来事を対象とする「イヴェント」という行為のアートを行ってきた作家。「イヴェント」にはインストラクション(指示書)があり、それに記載された行為をすることで作品が成立する、乗客の参加が必要なアート作品です。

 アートウィーク東京のバスのために塩見が制作したのは、《AWT 巡回バスの為の五つのイヴェント》という作品。

 バスに乗車すると1枚の黒い紙を渡されました。これが「イヴェント」が書かれたインストラクション(指示書)です。

 インストラクションには車窓から青空が見えるか確認する、目を閉じて周りの音に耳を澄ますなど、コロナ禍でも楽しめます。

 アートというと作品をじっくり鑑賞するイメージですが、塩見の「イヴェント」は自分自身が実行することで初めてアートになるものなので、旅の思い出として深く残りそうです。

いよいよ3つのギャラリーと1つの美術館を巡る旅へ
 今回、私が体験したコースは4つのルートの内、港区エリアを周遊するルートBの一部。ギャラリー3軒と美術館1館を巡りました。

Take Ninagawa
 最初に訪れたのは、2008年に設立された東麻布にある現代美術画廊「Take Ninagawa」。ここでは、アートの島、香川県の直島にある銭湯を活用したアート作品「直島銭湯 I♥湯」などで有名な大竹伸朗の個展が開催中。

 2019年の個展「ビル景 1978-2019」の記憶も新しい大竹ですが、本展覧会ではコロナ禍に取り組んだ新しい連作「残景」が展示されています。

 キャンバスに様々な素材を組み合わせた分厚い油彩画の堆積物から成る、三次元の構造を組み込んだ新たな作品を通して、記憶の最後に残る景色を探究できます。

rin art association@CADAN 有楽町
 次は、日本のコンテンポラリーアートギャラリーが加盟する組織、一般社団法⼈日本現代美術商協会(CADAN)が運営するギャラリースペース「CADAN有楽町」へ。

 ここでは鬼頭健吾、小金沢健人、水戸部七絵、やんツーのアーティスト4名によるグループ「COMBINE!」が開催されています。

 展覧会のタイトルにもあるコンバインとは、1950年代初めに、誕生した現代アートの技法のこと。過激で斬新なコラージュから、コンバインペインティングと言われています。

 今回のグループ展ではコンバインペインティングをより現代らしくアレンジした作品が並んでいます。

 たっぷりの油絵具で立体感のある人物像を描き、そこに現物のギターを貼り付ける躍動感あふれる水戸部七絵の作品など、見応えのある展覧会でした。

ギャラリー小柳
 これまで、杉本博司、ソフィ・カル、マルレーネ・デュマスなど世界中の名だたる現代美術作家の作品を展示してきた画廊です。

 ここでは、2020年に資生堂が企画する公募展、第14回「shiseido art egg」に選出され、「shiseido art egg賞」を受賞した若きアーティストの橋本晶子の個展が開かれています。

 薄暗い中でかすかに光が差し込む空間に、二つ折りにされた鉛筆画や、作品の一部が隠された鉛筆画がテープで止められた作品が展示されています。二次元の作品が奥行を持ち、新たな作品世界を構築していて、張り詰めたような空気感が展示室からは感じられました。

 中でも資生堂ギャラリーで開催された『Ask him』で展示したトレーシングペーパーにカーテンを描いた巨大な鉛筆画は圧巻。

 非日常的な空間で鉛筆画の力強くも優しい絵を眺めると時間を忘れてしまいそうでした。

 こちらのギャラリーは路面ではなくビルの9階にあるので、普段だと入るのにちょっと敷居が高いイメージでしたが、アートウィークでは気軽に入ることができます。そんなところもアートウィーク東京の良いところかもしれません。

アーティゾン美術館
 ツアーの最後は2020年にリニューアルオープンしたばかりのアーティゾン美術館へ。

 こちらは公益財団法人石橋財団が運営している美術館で、西洋美術、日本近代絵画に加えて、古美術品や現代美術なども幅広く収蔵・展示しています。

 アーティゾンとはArtとHorizon(地平線)を掛け合わせた造語で、時代を切り拓くアートの地平を多くの方に感じ取っていただきたい、という意志が込められているようです。

 ここではゴッホの自画像に変装する作品セルフポートレイトなどで有名な森村泰昌の展示「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×森村泰昌 M式「海の幸」―森村泰昌 ワタシガタリの神話」が開催されています。

お得なAWTパスの購入でオリジナルグッズも!
 会期中は運行するアートバスに乗り降りが自由にできるフリーパスが販売されています。

 エクストラパス(1日 2,800円)を購入すると数量限定のAWTロゴ入りのオリジナルトートバッグが付いてきます。たっぷり入るので美術館やギャラリーにある作品の解説が書かれたキャプションやミュージアムショップで買ったお土産などツアーの思い出をたくさん詰め込めます。

 トートバッグは様々なカラーがあるのでオシャレにアート鑑賞が楽しめそう!

①AWTパス 1,000円(1日)
②AWTペアパス 1,800円(1日 2名分)
③AWT4-dayパス 2,000円(4日)
④AWTエクストラパス 2,800円(1日)

 コンテンポラリーアートはなんとなく難しそうなイメージを持つ方も多いと思いますが、アートウィークで展示されている展覧会はどれもグローバルクオリティなので、現代アートに詳しい人だけでなく、これから学んでいきたい人にもオススメのものばかりでした。

 この秋は東京都内の現代アートを存分に楽しんでみてはいかがですか?
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